697人が本棚に入れています
本棚に追加
【十五】
漸くオーナーから連絡があって、予想通りの残念な結論を聞くことになってしまった。つまり、オーナーは撤退を決断したのだった。夢は潰えた。いや、そんな大袈裟なものではないにしても、兎に角やるべきことを私は失ってしまったらしい。こうなれば、女の子達にも早急に伝えて、早く別の道を探すように促してやろうと、私は電話をかけ続けた。
覚悟はしていたが、これは骨の折れる仕事で、全員を納得させるのは中々難しい。私は彼女達に信頼されていた分、裏切ることになってしまったのだから。勿論、水商売故に何時どうなるとも保証されない前提ではあるが、彼女達を確保する為に私は、下手な口約束を沢山してきたのだ。三ヶ月近くも、そんな空手形のような口車に乗って無収入のまま過ごしてきた彼女達が、怒るのも無理はないだろう。今の私に出来るのは、居留守は使わずに電話に出続けて、彼女達の腹の虫が収まるまで付き合い切ることだけなので、昼も夜も部屋に籠って外に出ることはなかった。けれど吐き出し尽くせば腹の虫は収まるのだろう。
三日もすると殆ど電話は鳴らなくなった。
私は留守電に必ず返信することにしていたので、メッセージを入れるようガイドアナウンスを録音すると、暫く眠ることにしたのだった。
目覚めると昼過ぎであり、留守電やメールには幾つかの履歴があったが、全て明奈という同一の女の子からだった。私を最も信頼してくれていた娘だったから、失望がひとしお大きかったろうし、過去の失敗で借金を抱えていたので、私も可哀想なことをしたという自覚があって早速連絡をした。何度話そうと結果に変わりはないにしても、そうやって女の子の不平不満に対応することに、私は慣れきっていたのである。二時間近くも話し、やっと一段落つくと、四日ぶりの風呂にありつこうと私は部屋を出た。
.
最初のコメントを投稿しよう!