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「おじさんてさ、目もそうだけど耳も若いねぇ。いや気持ちなのかな」
更に嬉しそうに笑う主人は、男から見ると何となく羨ましい存在だ。すると、今度は女将まで番台からわざわざ降りて私に近寄って来る。
「あんな若い娘が……、しかも女優さんみたいな娘が銭湯なんて、随分変わった趣味だと思ってたら、男の趣味まで変わってるから、あたしゃ面白くてさぁ!」
「違うよ。彼女とは幼馴染みなんだよ」
「あら、あんたこの近くの子だったのかい?」
「いや、違うけどね。それがこんなところで会ったから、そこは確かに面白いね」
すると、一旦は安楽椅子に腰掛けて嬉しそうにしていた主人が、「あっ!」と、声をあげて突如ガックリと肩を落としたのが見て取れた。
「あー、もう……、覗けねぇじゃねぇか!」
それを聞いて、私は可笑しくなった。
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