第1章

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後藤が署に戻りデスクに腰をおろすかおろさないかという時に、署内が慌ただしく動き出す。 後藤は『やっぱりな…』と、先程の死体が他殺体であった事を確信した。 普段大して使いもしない会議室には【茨城県利根川流域殺人事件対策室】などと書かれた紙が貼られ、この街で初めて起きた大事件に署員達は騒めいている。 「この静かな街でついに殺人事件か…物騒な世の中になったもんだな」 後藤に話し掛けたのは、後藤よりも二つ年上ではあるが階級は後藤よりも一つ低い小林武夫(こばやしたけお)という捜査一課主任だ。 彼もまたノンキャリア組で、上司に媚びる事をしない人間である。 それゆえ後藤との相性はいい。 「たけさん、タバコ辞めたんじゃなかったのかい?ヤニの匂いが体に染みついてるぐらい臭うぜ」 後藤が呆れ顔で小林に向き合うと、相変わらずの無精髭を撫でながら小林はニヤリと笑い『細かい事は気にすんな』と言いたげに後藤の肩を叩いた。 「さ、会議室に行こうか警部補殿」 小林はそう言って部屋を出て行った。
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