第1章

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坂西警察署から車で10分程度の距離に後藤の家はあった。 街中から少しだけ離れた場所にある警察署から10分車を走らせただけで、周りには田畑しかなくなる。 後藤の家の隣に一軒家が一つあるだけで、他は田んぼや畑しかない。 夏になればカエルが大合唱をするような、本当にのどかな街のはずだった。 田舎だからこそ都会に比べれば土地も安く、ローンだったが後藤もマイホームを建てる事ができたのだ。 広いとは言えない庭に車を停車させると、車の音を聞きつけた女性が玄関のドアを開け後藤に笑みを向けた。 「おかえりなさい」 お腹に独特の丸みを帯びた女性は、腹部をさすりながら嬉しそうに後藤に近付く。 背が低く、黒髪のショートカットがよく似合う優しそうな女性だ。 普段は鋭い目つきをしている後藤だが家に帰れば夫であり、近々生まれてくる赤ん坊の父親でもある。 優しい顔で後藤は妻、美弥子の肩を抱き寄せ家の中へと入った。
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