第1章

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「出迎えはいらないって、もし転んだりでもしたらどうするんだ」 毎日出迎えてくれる妻に対し、嬉しい反面心配でもあるのだ。 刑事になる事を決めてから後藤は結婚を諦めていた。 いくら今はのどかな坂西という街に住んでいようとも、刑事という仕事柄恨みを買う事もあるだろう。 だから生涯独身でいようと思った、結婚願望もなかった。 だが、生まれて初めて人を好きになり支えたいと…生涯を共にしたいと思えた。 それが美弥子なのだ。 「うふふ、大丈夫よ」 美弥子は柔らかな笑みを浮かべ、食事の支度を始める。 いつ後藤が帰宅してもいいように温める直前まで下ごしらえを済ませてある料理を手際よく調理する。 美弥子と結婚してよかったと、後藤が幸せを感じる瞬間だ。 テレビをつけると、早速利根川で死体が発見されたというあのニュースが放送されていた。
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