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「えっ…これって…」
美弥子の手が止まる。
「あぁ…この平和な街で、まさかこんな事件が起きるなんてな」
「じゃあ、あなたも…」
美弥子が不安そうな顔で後藤の様子をうかがう。
出産予定日まであと一週間、もういつ生まれるかもわからない状態ではある時期だ。
初産だからこそ尚更そばで支えてあげたい、不安な気持ちにさせたくないという思いはある。
後藤が坂西に越してくる前、結婚一年目でまだ巡査部長の頃は県内にある岩岡市という場所で勤務をしていた。
新婚だというのにその時も事件が発生し自宅に帰れない状況が続いた時があった。
恐らく美弥子はその時と同じになる事を覚悟したのだろう。
あの時と今では状況が違う、だが一家の主であり出産前の妻を支える立場にあっても、一般市民を危険にさらすわけにはいかないという気持ちがある。
平和な街に転勤が決まったからと安心していたものの、事件も事故も場所を選ばないのが現実だ。
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