第1章

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「すまん…」 後藤は申し訳なさそうに美弥子の目を見つめた。 美弥子はフッと笑って困ったような顔をする。 「何がすまん…よ。あなたはパパになるんだから…凶悪犯を捕まえてもらわないと私も赤ちゃんも安心して生活できないわ。私達は大丈夫だから、あなたは事件の事だけ考えて」 美弥子の言葉に後藤の目頭が熱くなる。 本当は不安で仕方がないくせに強がって、これが母親になる女の強さなのだろうかと痛感する。 「すまない、苦労をかけるが…必ず早期解決してみせるから」 早くに両親を亡くした美弥子が頼れるのは自分だけだ。 出産までに解決できるかはわからないが、一刻も早く事件を解決する事が最優先事項である。 調理された料理がテーブルに並んだ時、後藤の携帯が鳴った。 一瞬だけ静まり返る部屋。 後藤も、そして美弥子も直感したのだ。 これが事件の電話である事を…。
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