第1章

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後藤正志(ごとうまさし)40歳 坂西警察署、捜査一課の係長である。 ガタイがよく、鋭い眼光と昔ながらのリーゼントヘアーからして刑事だと気付く人間は少ない。 上司には無愛想で頑固、出世には向かないタイプであるが部下や一般市民には親身に接する事から人望は厚い。 現に先程後藤が挨拶した警察官も後藤の事を知っているし憧れていると言っても過言ではない。 後藤にはカリスマ性がある…と言うより、外見から考えれば意外と言うほど意外ではない経歴や、後藤が持つ独特の雰囲気に惹かれるのだろう。 若い頃は暴走族の総長をやり、不良雑誌に常連のように掲載されカリスマヤンキーと呼ばれていた。 かれこれ二十年以上も前の話だ。 腕っぷしの強さ、度胸のすわり方、男気、義理人情、全てを持つ男だからこそ暴力団からの誘いも大いにあった。 だが後藤は、ヤンチャをしていた矢先に父親が他界し、父親と同じ刑事になる事を決めたのだ。 いわゆる叩き上げの刑事だが、だから尚更キャリア組と呼ばれるヤワなタイプの上司などとは反りが合わないのだろう。
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