第7章

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以前より右に配置されたソファーに腰を下ろすと、目の前のテーブルの真ん中には小さなクリスマスツリーが置かれていた。出窓には、ポインセチアの鉢植えが置かれている。模様替えされた暖色カラーのこの部屋に、ぴったり似合っている。 小早川さんを目の前にして、すっかり忘れていたが、今日はイブだったんだ。 「今日、イブだね」 お盆の上に湯気の上がるカップを二つ乗せてこちらに歩いてくる彼女に言うと、 「……そうですね」 と、白々しい返事が返ってくる。 「イブなのに一人なの?」 大きなお節介が口から飛び出し、すぐさま後悔したが、とうに手遅れだったみたいだ。 彼女は無言のまま眉間に皺を作ると、カップをソーサーの上に置きその場に腰を下ろした。 「って、俺も人のこと言えないけど」 焦って陽気に言ってみるも、それにも反応はない。
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