第7章

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会社に近づくに連れて、車窓からはクリスマスムードの街並みが視界に入りこんでくる。電車内の釣り広告も赤い色がいつもよりも多く感じる。 今日は、クリスマスイブだ。 世の中の恋人たちが、一年間の中で一番盛り上がるであろうイベントDAYだ。 独り身で片思い中の俺にとっては、イブなんて寂しさを余計に感じるだけだが、俺は今日、どうにかして彼女にお土産を渡すつもりでいる。 そして、クリスマスの聖なる力を借りて……なんて言ったら、乙女チックで馬鹿げていると思われるかもしれないが、イブという特別な日に彼女に告白したいと思っている。 今日こそは。 イブの夜の期待でそわそわと浮足立っている社員を尻目に、俺は一人胸の中に熱い闘志を抱きながら小早川さんに目をやった。 彼女はいつもと変わらず真面目きった顔つきでデスクに向かっている。ハワイに行く前の彼女となんら変わりなく見える。
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