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部屋の前のドアホンを鳴らすと、ドアはすぐに開いた。
彼女と視線が絡むと、すかさず口を開いた。
「こんな時間にごめん、これ、ハワイのお土産」
頭で考えるよりも先に言葉が喉を通過していた。もしかしたら、声が上ずっていたかもしれない。だが、それすら今の俺にはわからなかった。
怖かったんだ。
彼女の反応が怖かったから、先に明るい雰囲気を作りたくて無意識に体が反応した。
彼女は手に持つ土産袋に視線を下ろし、「ありがとうございます、どうぞ」と、静かに言いドアと壁の間に俺の入る隙間を作った。
玄関に入ると、彼女が会社で履いているローヒールのパンプスが一足、玄関脇に並べられていて、部屋の中に誰もいないと察することが出来た。
彼女は寝る直前だったのか、上下グレーのパジャマに大きめのカーディガンを羽織った姿だった。何度か見たことのあるパジャマに不思議と安堵感が広がる。
だか、見覚えのあるパジャマに安堵したのもつかの間、リビングの中に入って目を疑った。
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