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この道にある唯一の街灯に照らされその〝紅”が鮮明に見える。
鉄臭いにおい
刺さる八重歯
いつもの黒い瞳なんて存在しない
真っ赤な…
真紅の瞳。
何度声を張り上げても彼女には僕の声なんて…
聞こえるはずがない
「真紅」
ほら…
僕は君の何にもなれなかった。
君は僕の…
あぁもう痛みなんかない。
むしろ吸い上げられる快感が体を支配している。
これが最後なのかな?
最後なら言わせてくれ…
哀れな僕の声を聞いてくれ…
「真紅…君が好きだ…」
言った瞬間倒れこみ彼女の腕に抱かれた。
そんな僕に彼女は…
笑った
真っ黒な微笑みで…
「私も“食事”は大好きよ…」
彼女は僕を残飯のように捨てた。
僕の短い恋と数年の時は幕を閉じた。
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