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こんな大事なことを今日は言わなかったじゃないのよ~!!と心の中でぶーたれて、そんな暇がなかったことを思い出した。
とにかく先にあたしの話を聞こうと思ったのだろう。そうこうしている内に、滝本には召集の電話が入った。
帰ったら話そうと思っていたに違いない。
ただしタイミングが悪く、あたしは鈴木の電話を受けたあとで既に姿を消していた。
・・・ってことだったのね。
ふらふらする頭を後ろの窓ガラスにぶつける。
あたしの後ろ、はるか下界ではまだ眠らない街の明かりが煌いているはずだ。
ごんごんと打ち付けていたら、滝本の怪訝な声が聞こえた。
「何してる」
「・・・何で早く教えてくれないのよ~・・・そこのところ、もの凄く大事じゃないのよ~・・・」
凹んでるんだよ!あたしは!
唸り声をあげる。
それを知っていたら、あんな長い自己嫌悪に陥ることはなかったじゃん。この生活を守れるって思えたはずじゃん!!
両手で顔を覆ってずるずるとガラスに背をあててずり落ちたあたしに、平然とした滝本の声が降って来る。
「いきなり来て寝込み、起きたと思ったら腹が減っただ風呂に入りたいだと要求して人を動かし、よくもそんな台詞が吐けるもんだな。その根性は是非見習いたいところだ」
あたしはじろりと睨んだ。
「・・・うるさいわね。その前に寝起きの怪我人のあたしを問答無用で襲ったヤツは誰なのよ」
「もの欲しそうな顔をして男の前でぼーっとしていた全裸の女は誰なんだ?」
「全裸にしたのはあんたでしょうが!!」
「凍えていたから暖める処置をしてやったのに、恩人に対してえらくデカイ態度だな」
なんだとコラァ!!うきいいいい~!!ムカつくムカつくムカつく~!!
あたしは寝転んでいた体を起こして滝本を睨みつけた。
それを上からみおろしてヤツが言う。
「・・・どうしてお前が怒るんだ」
「やかましい!」
突き飛ばそうとしたら、その伸ばした手をつかまれた。
滝本が静かな表情であたしを見ていた。
一瞬で怒りが冷め、あたしは彼をぽかんと見詰める。
「―――――――――お前は、一人ぼっちでいたがる」
掴まれた腕が熱くなった。
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