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静かな目をしている、その瞳をずっと見ていた。
「・・・すぐに、一人になりたがる。誰も信用しない。敢えて孤独を選ぼうとする。全部抱え込んで、そのまま遠くまで逃げ出そうと頑張る」
「・・・・」
見てられなくて、パッと視線を外した。
するとつかんだ腕をゆっくりと引き寄せて、滝本があたしを抱き締めた。
「―――――」
あたしは言葉を失くす。
頭の上で、彼の声が聞こえた。
「そろそろ、俺を認めてくれないか?」
滝本の胸に顔を押し付けられたままであたしは目を見開く。
呼吸まで、忘れてしまった。
・・・俺を認めて・・・って、言った?今?
滝本が・・・?
「体だけじゃなく、心も開いてくれ。全面的に人に頼れない性格なのは判ってる。・・・だけど、一部でもいいから、俺を受け入れてくれないか」
あたしはそろそろと手に力をいれて、彼の胸から顔を上げる。
間近で見る滝本は真面目な顔をしていた。
いつもの微笑も、からかいも、呆れた気配も何もなかった。
あたしは指で彼の頬を触る。その指先に彼の体温。
・・・幻じゃない。
まだあたしの体にまかれているのは、本当に滝本の腕なんだ・・・。
「・・・あたしは・・・」
掠れた声がでた。だけどそのまま話を続けた。
「・・・犯罪者、なのよ。でも、あなたはそうじゃない。・・・一緒にいたら・・・また今回みたいなことが起こるかもしれない。それが嫌なのよ」
「・・・だからまた、俺から逃げる?」
声が低かった。回されていた腕の力が緩んだ。
「―――――あたしは普通の社会人にはなれない」
滝本が頷いた。
「・・・そうだろうな。それは判る。俺はお前を変えたいんじゃない」
「どういうこと?」
あたしから完全に腕を離して少し距離をあけ、滝本は顔を下に向けて息を吐いた。
「ここ1年の状態でもいいって言ってるんだ。お前の指を折ることは出来ない。お前はスリを止められない。だからせめて俺の事務所でだけ使ってくれ。そして、黙って消えるな。それをされると守りたくても守れない」
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