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そんなつもりはなかった。でもぽろりと言葉が落ちてしまった。
「・・・守っ・・・て、くれるの?」
眼鏡の奥の瞳を細めて滝本が頷いた。
「ああ」
「どうして」
「放っとけない」
・・・・放っておけない。あたしを、守ってくれる。・・・この人が、あたしを。
犯罪者であっても、あたしを守る・・・。
自分では、泣くのかと思った。
滝本の言った言葉が心に染み込んで、あたしは泣くのではないかと。
長い間一人でいて、それはそれで完成した毎日だった。
だけどだけど・・・・。
そう思ってたから、あたしは泣くかもって、想像していた。誰かにいつか、君が必要なんだなんて言われちゃったら。スリであるあたしをそのまま受け入れてくれる奇特な人間が現れたらって。
でもそんなこと、あるはずないし、と思って一人で笑って来たのだ。今まで。
ところが、奇跡がおきて、その相手が現れた。
そしたらあたしは――――――――
何と、照れた。
涙なんか一粒も作られずに、無言のまま、真っ赤になった。
体中の血液が顔面に向かってダッシュしたみたいだった。マグマみたいに熱くなって、出火したかと本気で思ったくらいだ。
本日2回目の顔面炎上だ。今日は滅多に照れないあたしの、人生の中での照れ記録を大いに塗り替えた日だ。
「っ・・・!!」
両手で頬を叩き隠す。
熱くて熱くて熱くなったあたしの上半身で、今なら美味しい紅茶が淹れられるはずだ。お湯はきっと一瞬で沸騰する。
滝本は目を見開いてあたしを見ていた。
呆然としている。
「・・・や、これ・・は。ちょ・・・ちょっと、タイム!!」
あたしはがばっと立ち上がり、自分の寝室に向けて疾走した。
これ以上はヤツの前に居られなかった。
もうそんな、絶対無理だああああ~!!あの男の目の前にいたら、火が出て熱で溶けて死んでしまう~!!
うぎゃああ~!!飛び込んだ寝室のドアをバタンと閉めて、あたしはその場でバタバタと暴れる。
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