第6章 冬から春へ

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 あたしは朝日の中でまどろむ。  固い腕に包まれていた。  まだうとうととしながら、一体いつから滝本は情熱的な男に様変わりしたのだろうかと考えていた。  あたしが何を言い、何をしても、飄々として淡白な反応を返す男はどこに行ったのだ。あたしを抱く時以外は見せなかった制御不能の野獣のような本性と、昨日窓辺で見せた繊細な表情が一致しない。  ううーん・・・。同じ一人の男とは思えない。若干二重人格かなんかだろうか。  かもかも。それは十分に有り得るぜ。  昨夜も散々めちゃくちゃにされて、そのまま抱かれて眠ってしまった。寝返りを打とうとして動けずに起きたあたしをもう一度捕まえ直して滝本は眠った。  抱きしめられた腕の中でくるりと振り返る。  目の前に来た滝本の寝顔をじーっくりと観察する。眼鏡がなくて奥二重の瞳の形がハッキリと判る。  少し生えたひげが線の細い滝本の印象を男っぽくしていた。  そのうっすらと生えたひげを指で撫でていたら、寝ているはずの男がぼそっと呟いた。 「・・・くすぐったいから、やめてくれ」 「おお、起きてたの?狸寝入りなんてやらしー」  あたしが笑いながら言うと、うっすらと瞳を開けた。  そして顎を撫でて遊ぶあたしの指を捕まえて、苦笑した。 「・・・起こされたんだ、これに。酷い言われようだな・・・」  そしてあたしの体に巻きつけていた腕をといて、ううーんと伸びをした。 「窮屈だったでしょう、ひっついて眠ったりするから。腕痺れてない?」  むっくりと上半身を起こして、片手で顔をさすりながら滝本が言った。 「・・・夜中に逃げ出されたら面倒臭いからな」  ―――――――そんな体力ねーよ、あんなに人を無茶苦茶にした男が言う事か。あたしはぐるんと目を回す。  ため息をつきながら言ってやった。 「・・・逃亡は、諦めた」  顔にあてた手の指の間から滝本がこっちを見た。彼の薄い色の黒髪が朝日でキラリと艶を放つ。 「完全に?」 「へ?」 「完全に、逃亡を諦めたのか?」  あたしは寝転んだままで頷く。 「だって、守ってくれるんでしょう?鈴木の尻尾も掴んだって言ってたし。・・・あの男は今休暇中で、戻ったらあたしとまた仕事をしたいって言っていた」  滝本が顔から手を離し、眼鏡をかけて振り返った。
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