‡第一話‡

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「1ヵ月後の昼か………」 「翡翠………… お前まさか行く気か?」 「当たり前だ 彗蓮は苑州の中心といってもいいほどの場所だ そんな場所を血狐の奴等に渡すわけにはいかない」 彗蓮──── 苑州で一番活気のある街であり、緋劉国の倉庫と呼ばれるほど、各地から色々な物が集まる所でもある 「だからって、おい、待て! 何処に行くんだ翡翠! 話はまだ終わってない!!」 「話しても無駄だ 俺の答えは決まっている」 「翡翠!っ、鈴明!!」 「!」 恭牙に鈴明と呼ばれ、歩みを止める翡翠 「恭牙、二度とその名で俺を呼ぶな 次に呼べばいくらお前でも許さない」 「あ、おい!翡翠!」 バンっ!!! 『約束だ、鈴明』 「っ」 (思い出しては、ダメ 私は、俺は、翡翠として生きることを決めたのだから……… 思い出してはダメ……………) 「…………………李翔様………」 (……………会いたい) 「っふ………ぅ………」 (会いたい、会いたい、会いたい、会いたいよ) 「っうわぁぁぁぁ」 (会わないと、忘れると決めたのに 貴方を思い出す度、私は【翡翠】ではなく【鈴明】に戻ってしまう 誰でもいい、どうか教えて………あの方を忘れる方法を────) 少女の願いは叶わずに 今日もまた、過去に囚われ 一人、疲れ果てるまで泣き叫ぶ
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