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†side 翡翠†
「もうすぐ、昼だな」
(急がないと、約束の刻限に遅れてしまう)
血狐の頭から果たし状をもらってから、今日で1ヵ月になり、翡翠は血狐のアジトに向かっていた
血狐のアジトがある狐蓮(これん)は、黒狼のアジトがある狼蓮(ろうれん)から3㎞以上離れたところに位置している
─────ザワザワザワザワ
(それにしても騒がしいな
何かあったのか?)
「なぁ、おっちゃん
随分ざわついているが何かあったのか?」
「何かって…………
兄ちゃん知らんのかい?」
「ああ、だから教えてくれると助かるんだが…………」
「何でも皇后様が決まったらしいぜ!
いや~めでたいねぇ」
「……………」
(こう、ごうが……決まった?)
「な!兄ちゃんもそう思うだろ?」
「…………ぇ?」
「だから、これで太子殿下でも産んでくださったら、この国は安泰だなって!」
「そう、だな…………」
「なんでも、皇后様は天上の鳥たちも見惚れるほど美しい姫君らしい!
いや~、俺もそんな女を嫁に迎えたかったぜ~」
「なんだって!?
あたしのどこが不満なんだい!?」
「い、いや、誰もお前に不満があるとは言ってないだろ!
俺はただ男としての一般論を言っただけで…………
兄ちゃんもそう思うよなぁ?」
「あ、ああ、そうだな……
男ならそんな女を嫁に迎えたいよな…………」
(綺麗な方、なんだろうな……
きっと李翔様と並んでも違和感のない美しい、高貴な姫君………
私のように、がさつじゃなくて…………)
「お~い、兄ちゃん?
さっきからぼ~っとしてどうしたんだい?」
「っ、いや、なんでもない
教えてくれてありがとうな、おっちゃん
じゃ、俺行く所があるからこれで」
━━━━━血狐アジト・門前
「はぁはぁはぁはぁっ
ゴホッゴホツ」
(走りすぎたな……
何とか、刻限には間に合ったか)
『何でも皇后様が決まったらしいぜ!』
「っ!」
(今は、忘れなきゃだめ
今は大事な勝負なんだから
───俺は、黒狼の頭なんだから迷いは捨てろ、胸を張れ
いつものように、余裕綽々の態度で敵を翻弄しろ
よしっ!行くぞ!)
「門を開けろ!
俺は黒狼頭、翡翠!」
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