episode 2

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杯を返した。 「見ておいた方が、」 「…うん、」 「…覚悟ができるかと。」 「え、ちょっと待って、そんなに見た目えぐい?」 「さぁ?貴方がちゃんとパーティに行って、確認されては?」 「えぇ、いやいやいや、えー?気になるじゃん」 「気になるように言いましたから。さぁ。」 「さぁ、じゃねぇ!行かねぇよ!」 ぐびぐびと酒を飲みながらバルコニーから立ち去ろうとしている。 だがきっとパーティには行かずに別の部屋に立てこもるつもりだろう。 私も頭の中で、王や私の父への言い訳を考え始めていた。 「…何故そんなに頑なに、会おうとしないんだ」 せめて理由のヒントが欲しい。 そう思い王子の背中に問いかける。 私の声に立ち止まった王子は、振り向きはせず、 考え込むように宙を見上げた。 「……もう、どうせ逃げられないんだろ。」 「えぇ、」 「ならいっそ、…もう突然でいいよ。」 「突然…?」 「顔なんて見ちゃったら、余計なこと考えるだろう。あぁこの子と、子作りして、いい夫婦として王政の一端を担って、とかさ。そんな時間、…ちょっと短くさせてくれたって、いいだろ。」 最後は振り向いて、不機嫌丸出しな表情で訴えかけられる。 「判ったか。」 「それならそうと、王に伝えられては―」 「あのおっさんが聞くと思うか」 「…………」 「な、そゆことだ。」 王子は初めから結婚には納得されていなかった。 だが抵抗する術はない。 王子として生まれてきた時から逃れられない。 いつか来るこの時を覚悟はしていた。 それまでの期間で良いから、 誰よりも傍にお仕えできることを、喜びにしていた。 だから私は、 婚礼に抗おうとする王子を見て、 内心喜んでいた。 貴方の心はきっとまだ此処にあると、 ほくそ笑んでいたのだ。 「じゃあ俺、急病で寝るから、後は宜しく」 いたずら好きな少年のままの笑顔で、ひらひらと手を振りながら立ち去っていく。 「…承知いたしました。」 困った顔を作るのも随分上達した。 返事をするように右手を挙げて、 胸がせり上がるのを感じる。 国の行く末よりも、 貴方の一瞬の笑顔が奪われる方が、私にとっては大問題なのだから。
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