episode 2

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一息ついたところで、携帯が鳴った。 啓人からの着信だった。 ここのところ、彼に一日の殆どを占められている気がする。 「…もしもし」 『おう。怜、家?』 「あぁ」 『あれ、夜の飲み会だけどさ』 言われて頭の中で予定表を辿る。 そういえばそんな予定が入っていたか。 「うん、」 『あ、やっぱりお前も声掛けられてた?』 「冬馬のやつだろ?」 『そーそー、あれ何処だったっけ』 「駅前の飲み屋のビルのどれか、だろ。俺も、うろ覚えだ」 立ちあがり、電子ケトルに水をためた。 数センチも入ると元に戻して湯を沸かす。 すぐにそれは音を立てて沸騰し始める。 「…結局、何の集まりだったっけ」 『冬馬の学部の連れ?』 「ん~…そうか、俺もお前も学部の連れ、って括りか」 湧いたところで肩と耳で携帯を挟んで、 マグカップにインスタントコーヒーの粉を入れて、 お湯を注ぎこむ。 『他は?誰が来る?』 「知らね」 『ふーん、そっか。まぁいいか』 啓人の側からは特に音が聞こえない。 今何処に居るんだろう。 別に今まで、気にしたことなんて無いけれど、 些細なことまで、知り尽くしていたい。 『えーじゃあさ、下で待ち合わせようぜ』 「いいよ。俺もそうするつもりだった。」 『さっすが。』 耳を澄ませる。 微かにだが人の声が聞こえる。 外に居るのだろうか。 「…啓人、」 『あー?』 「何処に居んの?」 一口コーヒーを啜りながら問うてみた。 こちらは換気口を風が通過する音だけしか聞こえない。 『え?学校学校。なんで。』 「んー?…別に。なんでもないよ。」 『えぇ?何?暇なの?行こうか?家に居るんだろ?』 「はは、いいよいいよ、聞いただけだから。」 嘘だ。お前に逢いたいよ。 別に逢ってどうこうする訳じゃないけれど。 『なぁんだよ。変なの。』 電話越しで笑う啓人は、いつもと変わらない。 それでいいんだ。 今こうして共に過ごせているのであれば 下手に動いて何かを変える必要なんてないのかもしれない。 「うん…じゃあ、夜にまた。」 だがやっと手に入れた平穏の中でこそ、 望めば彼を自分だけのものにできるのかもしれない。
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