episode 2

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授業が無い日だったから部屋の片づけをして、 久々にゆっくり過ごしていたと思う。 あっという間に日は暮れて、俺は待ち合わせ場所に向かった。 学生街を抜けて、大学の最寄り駅へ。 その前にあるビルは飲み屋が各階に入っていた。 平日は大体いつもどこかのサークルや団体が飲み会をしているのか、 夜に近づくほど騒がしくなる。 歩いても十分行ける距離だが、面倒なので自転車で来た。 人が多すぎて辿り着く目前でサドルから降りて、あとは歩いて近づいていく。 見知った顔を幾つも見つけた。 向こうも俺に気付いたのか、名前を呼ばれた。 啓人も既に居る。 男が自分を入れて5人、女子も今3人居る。 女子の顔は見たことが無かった。 「お疲れ。」 適当に挨拶する。 別に疲れてはいない。 「おー怜、お疲れお疲れ」 幹事の冬馬が笑顔で俺の目の前に来た。 「あと2人来るわ」 「ふーん、10人?」 「そうそう、5対5」 「………え、何、これ、合コンなの?」 「あれ?言ってなかった?」 冬馬はとぼけたように言い放つ。 こいつ、わざとだ。 別に合コンと知っていたら来なかった、なんて言わないが、 ただの飲み会とはまた心の持ちようが変わって来る。 啓人を見た。 「…合コンだっけ?」 「いっや、俺も飲み会って聞いてたから」 「だよなぁ」 彼もまた突然の知らせに若干そわそわしている。 「俺スウェットなんだけど」 「俺もだよ」 「こういうのマナー違反とか言われんのかな?」 「んなこと言われても、悪いのは冬馬なんだから冬馬ボコるしかねぇわ」 「だな。いっか。」 淡々と共謀を語る俺達を、被告人は苦笑いで振り向いた。 まだ集合時間にはなっていない。 どうやら残りの2人も間もなく着くそうなので、このまま外で待つことになった。 短時間ならまだ耐えられるが、夜の風は随分と冷たくなった。 肌の白い啓人の鼻はちょっと紅い。 普段はコンタクトをしている俺は今日眼鏡をかけているので、 徐々にフレーム部分が冷えていくのを皮膚越しに感じて、 室内に入ったら曇るかな、とかしょうもないことを考えていた。 「あ、来た来た。エリーこっちー」 冬馬が飛び跳ねて駅の方角へ手を振った。 どうやら女子が到着したらしい。
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