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「まじで可愛いから」
一瞬振り返って満面の笑顔を見せた。
どうやら彼なりに本日の大目玉を用意したみたいだ。
男子一同が小声で「まじか、どれだ」と囁き合う。
俺も啓人も身体を左右に揺らして、人ごみの中からそれらしき人物を探す。
明らかにこちらに向かって小走りになる2人組が見つかった。
「あーいいよいいよ、走らなくていいって!」
「ごめんー皆もう来てたんだぁー」
透き通った可愛らしい声が聞こえた。
小柄な彼女と、もう一人も一見して見分けがつかない良く居る女子である。
「じゃあ揃ったから、上がりましょうか。4階ねー」
冬馬の号令でぞろぞろとエレベーターへ進んだ。
まだ面識のない者同士、男子と女子は会話はしない。
それぞれになんとなくまとまって歩いていた。
居酒屋の座敷に着いて、飲み物が行き渡り乾杯して、
そこでまずはといった具合に自己紹介タイムが始まった。
一発目は冬馬、学部と趣味を言ったおかげで後に続く者も同様に自己紹介を進めて行く。
二番手は女側の幹事、そこからは時計回りである。
確かに冬馬が言った通り、後からやって来た2人の内の1人は可愛い。
しかしかと言ってその他が大外れでもなく、皆結構可愛い。
男子がにやにやとそわそわを止められていない。
観察しているといつの間にか俺の番が回って来た。
まずい、名前をちゃんと聞いていなかった。
「あー…怜です。文学部3回、趣味は、スポーツ」
「えー?何やってるのー?」
「えー、別にサークルとかは入ってないから、呼ばれたら基本、何でも」
「すごーい何でもできるんだー」
本心から言っているのか判らないが、明るい合いの手が入るのは有難い。
「じゃあ続きは、この後、ね、詳しく」とうやむやに終わらせたらそれすら大はしゃぎで、女子のポテンシャルに大いに感謝する。
男女互い違いに座っていたので、俺の次は向かいに座る女子になる。
どうぞ、と手で合図すると大きく頷いてくれた。
本日の大目玉の彼女である。
「はい!瑛莉衣です!エリ、じゃないから、エリーって呼んでください!」
「エリー?ハーフなの?」
「違うよちゃんと漢字だよー。文学部の、フラ語です!」
濁りのない笑顔で一人ずつと目を合わせていくと、
俺のところまで視線が来て、
彼女は一呼吸置いてから、小首を傾げて瞬きをした。
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