prologue

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新しい一日が始まる。 新しい歴史が始まる。 それは言葉にし得ない程美しい景色と共に。 国は勝利を手にした、領土も手に入れた。 だが王子は、たった一人の家臣を守るために、 戦ともいえぬ状況下で命を落とした。 そんな馬鹿な話があるか。 「淋しいじゃ、ないですか」 家臣を、命懸けで守る王子が何所に居ましょうか。 貴方がしたことは間違っている。 そんなこと誰も望んでいない。 貴方を守るためだけに私は生きていたのに。 だからこれは、そのお仕置きだ。 罰だ。 私に与えたものの代償として、受け取るが良い。 長い前髪をかき分けて、開いたままの瞼を撫でて下してやる。 まるでまだ、眠りに落ちているだけのようだ。 寝付けない貴方に言われるがままに幾度となく絵本を読み聞かせた。 そして最後まで聞かずに夢の中へ旅立ってしまわれる。 幼き姿と、なんら変わっていない。 その度に我慢していたのですよ。 貴方に一番近くで触れることを。 そっと一度だけ、口づけをした。 最初で、最後の、私が犯した罪だ。 もう良いのだ。 あぁ神よ、 彼の方の傍に私が存在することが赦されるのであれば、 どんな罰でも受けよう。 だからもう私を独りにしないでください。 幾千の朝と夜を越えたら、貴方と出逢えますでしょうか。 もう争いなんてしなくてもいい、 悪夢のような場面を幾度となく見なくても良い、 貴方が唯、楽しそうに生きていける世界で、 今度こそ貴方を守り抜きたい。
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