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熱い日差しが疎ましい。
目を閉じていても分かる。
朝だ。
また1日が始まるのだ。
そして耳に届くのは、甲高い音。
徐々に大きくなるその音は耳元で同じリズムの振動を伴う。
手だけを動かしてその音の元を探り当て、慣れた手つきで音を止めた。
顔に当たる空気は冷たい。
それなのに身体中に汗をかいていた。
煩い音が消えたことに安堵の溜息をつくが、
その瞬間、勢いよく上体を起こした。
突然身体を動かしたからか、
今まで味わっていた、言い表せぬ感情のせいか、
息が上がっている。
左手は先程アラームを止めた携帯を握ったままだった。
時刻は朝の7時1分。
ディスプレイの文字が良く見えないが、通話履歴を開いて、
当然一番上に表示されているであろう相手に、発信した。
ゆっくり携帯を耳元に寄せる。
右手は厚手の布団を握りしめていた。
ダイアル音が何回も繰り返されて、その度に鼓動が早まる。
1分程その時間が続いたあと、音は途切れた。
画面が見えないから通話が途切れたのか、受話されているのかはその時点ではわからないが、
聞こえる微かなノイズが、通話状態であることを証明する。
『………ぁい』
「もしもし」
『んだよ』
「………啓人、」
『んー?』
「……いや、」
『あ?もしもし?怜?』
「あ、はい」
『はい、って、…何の用だよこんな、朝から…』
「…っ、今日、異文化共生のレポート提出、だよ。」
『…えー……?……ぅっわまじか忘れてたやっべサンキュー!』
「おう…」
『え、まじか、お前何時に出しに行く!?』
「あー……10時。」
『9時にカフェテリア、来れる?』
「うん」
『見せて』
「あい」
『じゃまた後で!』
言い終わらない内に通話を切られた。
途端に力が抜けて、携帯を持つ左手を布団に打ち付けた。
涙が止まらない。
声にならない声を、掌で覆う。
こんなにも鮮明に、昨日見た夢を覚えていたことがあっただろうか。
色彩も、香りも、温度も、感情も、
生々しくて仕方がない。
それは数時間で紡がれる訳がない膨大な歴史。
俺はもう一度携帯の画面を覗いた。
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