退屈

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最初のうちは、魔王が相手してきた数多くの勇者一行の死体を片付けるのが嫌でしょうがなかったが、3年もやってると特に感じることもなくなっていた。 こういう薄情なところも、もしかしたら先代魔王を倒したときの世代交代の影響を受けたかもしれない。 かくいう魔王も、勇者だった頃からは性格自体は変わっていないのだが、あそこまで人を簡単に殺すようなやつではなかった。まあ、戦闘狂だったのは認める。 一度、魔王にどうして勇者を殺せるのか?と聞いてみたことがあった。 「あー、それね。うん、なんて言ったらいいのかわからないんだけど・・・魔王としての役割?みたいな?♪」 魔王いわく、なんだかそうしないといけなくてしょうがないらしい。声がなんだか弾んでいたけど、きっと気のせい。本気で楽しんでるわけがない・・と思いたい。 「それに相手が殺しに来ているんだから、殺されても文句は言えないでしょ」 口元がわらっていた気もするが、それもきっと何かの間違いだ。・・・うん、自信はない。 「おーい、副官ー!暇だよー!退屈だよー!」 テラスで物思いにふけっていたら、魔王が呼ぶ声が聞こえた。 いけない、あの声の調子からして、だいぶご機嫌斜めのようだ。 「今行くからちょっとまってろ!・・・・って、なんでパンを丸めて遊んでいるんだ?おい、なんでふりかぶる?お前の投げるものはなんでも致命傷になるんっだ!って!あぶな!」 魔王の投げた丸めたパンは俺の頬すれすれを通過し、遥か彼方に飛んでいく。重さのないパンがあそこまで飛ぶような速度が直撃するシーンなど想像もしたくない。 「あぶねぇだろうが!顔面すれすれだぞ!?」 「そんな怒鳴ることないじゃん。ほら、顔面ケーキみたいな感じになるだけよ」 「あんなもん食らっちゃ、俺の顔面自体がパーン!と弾けるわ!」 「あははは!それ面白い冗談よ!」 「本気だ!あほ!」 コンコン・・・ 俺と魔王がパン投げ合戦をしていると、部屋の扉が控えめにノックされた。それを聞き、俺も魔王も動きを止める。
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