プロローグ

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空は暗く、大地は黒い。 光という光が一切届かず、光源となるのはゆらゆらと怪しく輝く鬼火のみ。 人間には到底住めず、魔物や魔人には快適な世界・・・ それが魔界だ。 俺はそんな魔界の大地に片膝をつき、息も絶え絶えに横を見る。 俺の周りには魔人どもの死体が数えきれないほど転がっていた。ぐしゃぐしゃにつぶれたものや、切り刻まれた死体が俺にその無機質な目を向けている。 (そんな目でみるんじゃねぇ・・・) 自分の状態は自分がよくわかっている。片腕がなくなり、右目はつぶれているのかわからないが、とにかく見えない。意識は気を抜けばすぐになくなるだろう。 つまりは瀕死だ。これ以上のダメージは、そこらへんに転がっている魔人どもと同じ末路になることを意味している。 俺もあの無機質な目をするのかと考える。 そしてすぐにやめた。そんなことになりたくない。 しかし、俺の体はこれ以上動きそうにない。残された希望は・・ 俺はこんな地獄のような景色の中で、喜々として剣を振るい合う1人の人間と一匹の魔人を見た。 人間はその長く美しい金色の髪をなびかせながら、細身で小柄な体で黄金に輝く剣を左右上下にフェイントを織り交ぜながら振る。 魔人は黒髪の中から赤い目を輝かせ、大剣でフェイントをさばき切り、隙あらば人間の急所に必殺の一撃を狙う。 『勇者』と『魔王』 この戦いの行く末は彼らの勝敗にゆだねられていた。
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