プロローグ

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勇者はフェイントがすべて読まれていることに対し苛立ちを感じてはいないだろう。 彼女はそんな人間ではない。むしろ喜びを感じ、自分の実力を存分に発揮しても倒しあぐねている相手に好感さえ持っているはずだ。 その証拠に、彼女の笑みは一切たえることはなかった。 勇者は大きく振り上げた剣を斜めに振り下ろす。それを魔王は上段に大剣を構えて受けの体制をとる。 それを見た勇者は、剣の軌道を無理やり変えて魔王の剣との接触を回避する。そしてそのままの勢いで体を回転させて振りぬいた剣を突きへと変え、空いた魔王の腹に突き刺す。 魔王はそれを紙一重でかわすが、衣服は剣により裂け、その剣には赤い血がついていた。 苦痛に顔をゆがます魔王。しかし勇者の攻撃は終わらない。 突いた剣を横に寝かせ、横一文字に剣を振るう。 狙うは魔王の胴体。恐ろしく速いその振りで、魔王の胴体は半分に切断された。 ・・・と思ったが、さすがは魔王である。すんでのとこでその攻撃を後ろに跳ぶことで回避していた。 だが完全には避けられなかったようだ。 魔王の胴体からは血が流れ、地面にその血を垂らしていた。 魔王は自分の傷を目で見て確かめ、傷を手で押さえた後に、高らかと笑ったのだ。
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