プロローグ

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「ははっ・・・ふははははっ!!我が傷を負った!この我が傷を負ったぞ!?」 魔王は心底嬉しそうに叫んだ。自分の傷を、血を見て口元をゆがませながら。 「しかもこのような小娘に!まこと世界というのはそこが知れない!!我に挑んできたときは同等かそれ以下の存在だったお前が・・・数刻のときさえ経たない間に我を追いゆき、そして圧倒的に凌駕した!!」 まるで喜劇を楽しむかのように大げさな手振り感情を表現する魔王は、視線を己の傷から勇者へと向けた。 「なあ・・・・勇者よ!!!」 語りかけられた勇者は、その大きな瞳を細めた。 そこで俺は気づく。彼女に、先ほどの喜々とした表情がなくなっていたことに。 「・・・ええ。私はあなたの力をこえたみたいね。この戦いの中で・・本当に楽しい戦いの中で私はあなたをこえてしまったわ」 その声には何の感情も感じられなかった。淡々と話し、魔王を見る目はどこまでも冷たかった。 魔王はその目を見つめ、そしてふぅ・・とため息をつく。 「我も昔は・・この瞬間に・・そのような瞳をあやつにむけたのか・・」 とても穏やかに、何かを懐かしむかのようにそう呟いた魔王は、力なく大剣をその手から離し、両手を広げた。 「さあ我にとどめをさすがいい!!我をこえるその力で!技で!!剣でっ!!!」 魔王の叫びを聞いた聞かずか・・・勇者はゆっくりと魔王に近づきながら剣を振りかぶる。
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