退屈

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俺はその視線から昔の記憶を頭に思い浮かべる。 それは魔王を倒したあの日。 勇者が魔王を倒したあの日。 そして、勇者が魔王になったあの日を。 (そんな目でみるんじゃねぇ・・・) 俺はあの日に思ったことと同じセリフを吐く。そしてそんな記憶を思い出させた死体を適当に引きずりながら、部屋からテラスへと移動する。 テラスまで死体を運んだら、そのまま乱暴に死体を外へと放り投げた。 ・・・・・・・・ドスン・・ 投げてからしばらくしたら、鈍い音が耳に入る。下を覗くと、死体は更に原型を留めずにぐちゃぐちゃになって潰れていた。あとは魔界の野犬が勝手に死体を貪って、処理をしてくれるだろう。 そう魔界の野犬。ここは、魔界なのだ。 勇者・・・つまり今ここにいる魔王の彼女が先代魔王を倒したあの瞬間、魔王の世代交代が行われた。 誰が、何のために、どうやって・・・。それは今でもわからない。 ただ、先代魔王を倒したとき、頭のなかに声が響いたのは覚えている。何語なのか、何を言っているのかもわからなかったが、とにかく声が聞こえたのだ。 それは勇者も同じだったらしく、二人して頭を抱えた。今まで味わったことのない痛みが脳の中心に走った。そしてそのままブラックアウト・・・。 気づけば俺達は記憶をなくしていた。正確には、魔王と戦い、勇者とその仲間だったことは覚えていたが、それ以外は忘れてしまったのだ。どこの生まれなのか、名前はなんだったのか、もうさっぱりだった。 しかし、それだけで終わったのは俺だけだった。 「私・・・魔王になっちゃったみたい・・・」 その時の彼女の嬉しさとも悲しさとも違う表情は多分死ぬまで忘れない。彼女がどのような気持ちであの言葉をいったのかも多分、わからないだろう。 そんな経緯で俺達は魔界の魔王城で魔王として、3年間ここまでやっている。 どうやら、魔王はやめたくてもやめれないらしい。 魔王も、「まあなっちゃったものはしょうがないわよねー」なんて言ってるし、俺も魔王を一人にすることはできないので一緒に生活をしている。
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