“toilet―2”

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“toilet―2”

『!』  僕はギョッとした。 『まだこんな物が残っていたなんて…』  しばし僕は、目を見開いたまま固まってしまう。 『21世紀も目前だというのに…』  フツーはこんなもの、見てはいけないのだ…と言うより、フツーは見えないようになっているものだ。 『話に聞いた事はあるけど、まだこんなものが残っていたなんて…』  僕はその場面に、いったいどう対処したらいいのか、わからなかった。  その日僕は、ロサンジェルスからフリーウェイに乗り、南西の方角にクルマで2時間。“Perris”という街のモトクロス場にいた。こちらでは、日曜日ともなれば、毎週のように草レースが開催されている。僕は休日の「暇潰し」に、レース観戦に訪れていた。  そんなさなか、僕に「大自然の呼び声」がかかる。それも「大きいほう」の…。僕は、ずいぶん昔に建てられたのであろう、クラブ・ハウス風の古い建屋に入り、トイレを探す。 (こちらの「大」用の個室のドアは、使用中かそうでないか足元でわかるように、下方が大きく開いている物が多い。開放的と言えば開放的なのだろうが、個室にドアはあっても、初めからカギが付いてなかったり…無用心と言えば無用心だ)。  明るい陽射しの屋外からいきなり入ると、古いアメリカ風の建屋の中は、いっそう薄暗く感じる。 『ここかな?』  僕は見当をつけて、ドアを開けて中に入る。入ってすぐ。右下の方に視線を向けると…。 『!』  僕はギョッとした。 『まだこんな物が、残っていたなんて…』  しばし僕は、目を見開いたまま固まってしまう。そこには…  黒くて細いフレームのメガネを掛け、薄くなった金髪の奥の頭皮に、うっすらと汗をかいている三十代くらいの男。モトクロス・パンツを膝まで下ろし、こちらを向いて、ウエスターン・スタイルの便器に腰掛けている。上半身裸なので、ほとんど全裸に近い状態だ。 『話に聞いた事はあるけど、まだこんな物が残っていたなんて…』  つまり、男子トイレの中。そこにいくつかある個室。そのドアが…付いてない。 『!』
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