“toilet―2”

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 僕の顔には、明らかな驚きの表情が浮かんでいたはずだ。つまり、「アメリカ人じゃない」という事は一目瞭然。そんな僕の、あからさまな驚きの表情に…「ウンコをしている時の犬の顔」を思い浮かべてほしい。無防備で、情けない顔をしてキバッてる…彼はバツの悪そうな、テレくさそうな苦笑いを見せながら…「ハ~イ」…僕に、そう声を掛けてくる。 「ハ、ハイ!」  我に帰った僕は、そんな声にならない返事を返して、「小用」の便器に向かう。向こうの人にしてみれば、『むかし懐かしい旧式トイレ』なのかもしれないが、冗談じゃない。「出る物も出なくなってしまった」僕は、とりあえず、「小さいほう」だけ済ます事にしたのだ。でも、 『なんだよコレ?』  そこで僕は、また頭をひねる。 『蛇口が無いから、洗面台じゃないよな?』  陶器製の、中途半端な高さの、共同の「流し台」のような物。顔を洗うにしては低すぎるし、蛇口も無い。でも、日本男子の僕にしてみれば、妙に高い位置にある。僕ですら、つま先立ちでなくては届かないような、ひとり用「小用(あさ)便器(がお)」を経験した事もあった。でも、 『ここでいいのだろうか?』 「流し台」で「用を足した」なんていったら、ヒンシュクものだ。僕はウロウロしてしまう。 『うう~ん。もういいよ!』  僕はおもてに、日本でもよく見かける「移動式簡易トイレ」が設置してあったのを思い出した。 『なんてこったい!』  僕はオシリを締めながら、足早にそこを後にする…。 「ふ~」  狭いが落ち着ける場所に入って、ひと安心。 『女子トイレも同じなのかな?』  女性の同伴者がいれば、ぜひとも確認しておきたいところだったが、あいにく男ばかり。叶わぬ夢となってしまった。 「便所を見れば住人がわかる」とか、「トイレは文化だ」なんて話を聞いた事があるけど、海外に行くと、トイレでその国の文化レベルがわかったりするものだ…と思っていた。だから、先進国でこんな思いをするなんて… 「夢にも思わなかったよ」  ちなみに、アメリカでは“rest room”と言うが、オーストラリアで“rest room”と尋ねたら、“toilet?”と聞き直された。
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