第1章

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 高校から始めるという選択肢もあったのだが、俺が高校に入ると同時に父親が海外転勤、父親にだけハートマークのハンバーグを出す程夫を愛してやまない母親も一緒に行ってしまった為、ハウスキーピングを一人でこなさなきゃという事情もあり。  第一ここの高校のサッカー部は全国大会常連の強豪、中学まで帰宅部だった俺に練習についていけるとはとても思えなかった。  だって、割と運動センスのいい侑だって五軍どまりだったのだ。  最も侑の場合はプレーにムラがありすぎて、監督に信頼されなかったというのが出世できなかった理由かも、とサッカー部の友達から聞いた。  というわけで最近の放課後は帰宅部三人、空いた教室で暑い中青春してる運動部の皆さんを眺めている。 「ねえ、今日の晩御飯何?」  明日菜が俺んちの夕食に探りを入れる。 「また食いに来んのかよ」 「いつもこうちゃんちで食べてから自分ちの晩御飯も食べてる」 「どんだけ食うんだよ、よく太んないな」 意外なことに、明日菜は、「学校一モテる女!」らしい。 十年以上一緒にいて、多分お互いのおねしょまで見たであろう関係の俺からしたら、ちょっと世間の目がおかしいと思わざるを得ない。 だって色気とか可愛げ、なんてものは前世でファンタジックなドラゴンに食われてきたような、遺伝子が縦に伸びることに集中して胸とお尻を忘れてしまったような女なのだ。 「んで侑はこれからどうすんだ? 勉強に命賭けるか?」 「それは無理」」 「じゃあ逆にナンパしまくるとか?」 「シャ、シャイな俺に、そ、そんなことが出来ると思うか? 街で噂のトゥーシャイシャイボーイの俺に! モテたい、しかし純情。はぐれ高校生純情派、ピュアなラブがフェイバリット」  自分から聞いておいてなんだが、最初のシャ、シャイまでしか聞いてなかった。 ひとしきりボケ二人とツッコミひとりの変則トリオで会話したあと、誰からともなくゆるゆると帰り支度を始めた。 最後まで侑は「モテたい、彼女欲しい」と言い続けていた。 口にこそださないが、世界中の男子が共感する言葉だろう。 少なくとも俺は激しく同意。 ギリギリ東京都内のこの町を、夕暮れがオレンジキャンディ色に染める。 いつも通りの小さくて穏やかな商店街だ。 明日菜と二人で隣同士の家まで、学校から徒歩五分の道のり。 「ちょっと悪いけどスーパー寄ってもいい? パスタの具を買っていきたい」
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