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「ここ三階だぞ! それとも飛んだら彼女出来んのか?ならフライハイもやぶさかでない! おいきなさい、ハイ喜んで!」
侑はよく判らないリアクション。
さっきの死刑宣告発言の主、明日菜とは幼稚園からの腐れ縁だ。
実は家も隣同士、ちっちゃいころには風呂だって一緒に入っていたらしい。
……そう言えば小学校に入ったあたりから、明日菜のパンツ見てないな。
「明日菜、パンツ見せてくれ」
「は? なんで?」
俺は気心知れた相手にはとてもストレートだ。
明日菜はスカートを両手でぎゅっと抑えつけ、そっぽを向いてしまった。
どうやらパンツは見せてくれないらしい。
ちょっと顔が紅潮してるのは気のせいか。
帰宅部三人、まったりと無駄で素敵な時間を過ごしている。
侑はついこの間までサッカー部五軍のゴールキーパーだったのだが、「モテないよー、五軍じゃモテないんだよー、ボールは掴めてもガールのハートはキャッチ出来なかったよー」と情けなく言い残してサッカー部を去った。
明日菜は中学まで陸上をしていて市内最速女子の呼び声も高かったのだが、高校に女子陸上部が無いと分かるとすぐに俺と同じ帰宅部になってしまった。
「航平は最近放課後も学校に残るよな、海外サッカー観戦はやめちゃったのか?あ、明日菜パンツ見せて」
「いや、今もサッカー観てるよ。ただここんところ前みたいな熱が入らないんだよなー、俺もやっぱりパンツ見たい」
明日菜の瞳の奥にマヒャドが宿る。
「ここが西部開拓時代だったら良かったのに。二人をリボルバーで心臓に遠いところから撃ち抜いていくの。段々急所に近づいていく中、無様に命乞いして欲しい。絶対許さないけど」
侑に言った通り、俺は海外サッカーをチェックすることが減ってきていた。
中学の時には部活もやらずに時間を惜しんでCSの試合中継を観ていたのに。
遠因として、やはりあの(俺の中では伝説となった)スルーパスを目の当たりにしたことが挙げられるかもしれない。
そう、あの日からピッチでサッカーを体験、つまり自分でプレーしてみたくなったのだ。
ただあの時中学二年の夏、今さらサッカー部に入る勇気もなく。
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