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俺が新クラスに行き、指定された席に座ると一回エリコを探した。
彼女は友達と話しているらしく、さっきまでとは打って変わって楽しそうな笑顔を見せている。しかし俺の視線に気付いたのか、またさっきのような膨れっ面をして俺を睨んでから、また笑顔になり友達との談笑に戻った。
「なんなんだよ……」
目紛しく変わる彼女の表情と思考回路は、俺の理解を遥かに超えていた。
バシッ
「あて!」俺の頭に軽く衝撃が走る。
「『あて』じゃねえよ、お前。何、朝から奥さんの事凝視してんだよ」
ケイスケだ。こいつは去年、俺と同じクラスになってから馬が合い、つるむようになった。エリコのような同中の幼なじみとは別で、高校で出来た初めての友人だ。
「奥さんじゃねえよ」
「お前、そんなんで良いのか?エリコはなにげに人気があるからな。気をつけろよ、タークン?」
「お前はタークンって呼ぶなよ!!!っていうか、お前が居るって事はケイスケも同じクラスか?」
「あぁ?お前知らなかったのかよ。親友のクラスとか気になんない系か、お前」
「うるせえよ、俺は朝からモテモテでそれどころじゃなかったんだよ。隣の女子が俺の方をちらっと見て」
「あー、多分、てか絶対お前じゃねえ」
「何だよ、それ」
「あっちだよ、あっち」
ケイスケが指差した方を見ると、そこには……。
一人の美しい男子が居た。
大きく透き通るような瞳。
肌理が細かく、白い肌は女性の様だった。
何とも言えない中性的な雰囲気に僕は彼の性別を疑い、自分の性別を疑った。
「おい、大丈夫か?」
「え?あ、あぁ。あれ、男子か?」
「お前、何言ってんだ?当たり前だろ」
「だ、だよな」
一人称を見失い、一瞬男性としての性をも見失った俺は、それを酷く反省した。
よくよく見ると肩幅や腕まくりをした腕の筋肉のつき方は、しっかりと男性のそれだった。
「大丈夫か?お前、目が逝ってたぞ」
「そ、そんな事無いって、何言ってんだよ。バカかお前」
動揺を隠しきれずに、俺は話を反らす様に話を続けた。
「で、誰なんだよ、あれ」
「あいつは史上最強の生徒会長さ」
「なんだ?史上最強って」
俺はもう一度、ちらりと目をやると、流石にさっきのような感覚は起きなかったが、それでも通常のイケメンと呼ばれる男子の兼ね揃えている格好良さとは違う「美」を感じた。
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