1 日常

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 ガタンっ  意識が覚醒していく。どうやら眠ってしまっていたようだ。暖かな陽気に包まれながら微睡む。体を起きあがらせる、視界に入ってくるのは開け放たれたままの扉。 「……何時だ」  寝ぼけたままの頭、ポケットの中を探るとスマートフォンのランプが点滅を繰り返している。画面には十二時半の文字、そのほかには友人からのメッセージが届いていた。  それらを見ることなくポケットに戻した俺は、蝕むようにゆっくりと侵攻してくる尿意を感じた。 「トイレトイレ」  誰に言うでもなく、一人呟く。その言葉は俺の耳以外届かない。開け放たれたままの扉をくぐり抜け、階段を降りていく。  俺、扉あけたままだったっけ?  そんな疑問も四階にたどり着いたときには脳の隅に追いやられ、トイレの前についた時はその隅からも姿を消していた。 「さっさと金出せよ」 「うっぐぁっ!」  扉を開けると二人の男子生徒がいた。一人は小便器に顔をつっこまれ、もう一人は茶髪に染め上げ、男子生徒の顔を便器に押し付けていた。  俺はその二人の後ろを通り、一番奥に設置してある便器の前に立つ。ズボンの窓を下まで引き下げ、そこに手を入れようとした時視線を感じた。  横を向くと、便器に顔をつっこまれていた男子生徒とつっこませていた男子生徒が二人で俺のほうを見ている。 「何だよ、なんかようか」 「え、いや、その」 「こっち見んなよ、でなくなったらどうする」  何か吹き出るような音が後方からした。  茶髪の男子生徒は犯罪の現場を見られたとでも言いたげな視線、しかし、俺があまりにも何のリアクションもとらないがためにどうすればいいのかわからなくなっているのだろう。 「だからこっちみんなよ、続きやればいいだろ」  出ない。  先程まで俺を徐々に蝕んでいた尿意。それを放出するためにこの場に来たというのに、すでにいた先客に変な目で見られている。現在進行形で、そのせいなのだろうか、猛烈な尿意は今なを俺を蝕んでいく。出たいのに、出ない。出したいのに、出ない。  まるで呪いだ
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