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「ああああああっ!!出ない!どうしてくれんだこのやろう!」
「え」
ムシャクシャした俺は茶髪の後頭部を握り締め、勢いよく便器の中に押し付ける。先ほどまで押しつけられていた男子生徒はポカーンとした間抜け面で俺を見ていた。
俺は押しつけたまま便器の上に取り付けられた丸いボタンを連打する。
「うわっ!?」
押しつけられていた男子生徒が流れ始めた水に驚き、拘束がゆるんでいたおかげもあり便器の側から離れる。それをチャンスとみたのか一目散にトイレから逃げ出した。
一方、俺の手元の男子生徒は顔に便器からあふれ出る水を浴びながら意識を手放していた。仕方がないので彼の足を掴み、トイレの扉付近まで引きずり、扉から外へと放り投げた。変な音がしたが、恐らく大丈夫だろう。
「それよりおしっこ……」
ズボンの窓は開ききり、自分の息子は顔を出したまま。一連の俺を見ていたであろう手は俺をたたく素振りを見せている。
急いで便器に体を任せ、いざ放尿と意気込むが、出ない。最早ここまで出ないというのは何かがおかしい。呪いうんぬんというより、病気なのではないだろうか。
額ににじむ汗。強烈な尿意は今なお俺を襲い来ると言うのに、息子からは放出されない。もしかしたらこの強烈な尿意を放出できなければ爆発してしまうのではないだろうか(息子が)。頭を過ぎる恐ろしい想像、尿意による思考の単純化、異常なまでに張り詰められたら俺の緊張。様々な要素が重なり合い、さらに不協和音を奏でていく。
ガタンっ
後方で音がした。
俺の後方には個室が二つ連なっている。先程まで尿意のおかげでしっかりと周りを見ることができなかったが……個室には誰かはいっていたのだろうか。俺の動きは完全に止まった。
襲い来る尿意は止まらない。
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