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「佐伯さん!」
林檎、葡萄、柿を堪能して、いよいよ待ちに待ったキノコ狩り街コンの日。
いつものように収穫スタイルを決め込んできた私に、話しかけてくる変わり者がいた。
「あれ、野村君じゃない」
振り返ってみたら、眩しすぎるくらい笑顔の好青年。
そこにいたのは、会社の後輩の野村君だった。
「て、どうしたの。その服装」
着飾って山道に挑む集団とは違い、爽やか笑顔は完全なキノコ狩りの正装で。
「林檎に葡萄に柿。先輩と話がしたくて参加したのに、先輩、収穫に夢中で全然気付いてくれなくて」
先輩と話がしたくて。
この好青年が、私と?
「だから、有給取って田舎の婆ちゃん家に行ったんです。キノコ狩りの極意を学び、猛特訓してきました。今日は先輩より沢山取ってみせますよ」
ああ、そう言えばクソ忙しいのに最近有給取ってたっけ。
て言うか何で対抗心燃やしちゃってるの。
いやいやまずそこじゃなくて、さっきの話が。
「……」
きらめく笑顔に動揺しながらも、頭は妙に冷静だった。
仕事を休んで修行に行くような奴と、ラブストーリーなんか描けるか。
「さあ、負けませんよ」
まあ、とりあえず、恋愛になるかどうかは今のところ未定なままで。
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