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『ミウの事が片時も頭から離れなくて、夢中で城を抜け出してしまったよ』
頬を染めながら切なげな表情でそう言う彼は、お城の王子様。
私はその城下町に住むただの娘。
決して結ばれない秘密の恋。
現実にはあり得ない設定だけど、キュンキュンしてしまう恋愛シミュレーションゲーム。
『私が愛しているのはミウ、君だけなのに』
王子様は近々隣国のお姫様と結婚することになっていて、私たちは別れなければならない超クライマックスなのだ。
この王子様が苦しげな表情で私のことを好きだと告げるのに、毎回キュンキュンする。
「――山内、俺の分もお茶煎れてくれるか?」
「あ、はい!倉木さんも堀さんの分も煎れます」
「悪いな、ありがとう」
給湯室にニュッと顔を出してリクエストしてきた倉木さんに驚きながらも、冷静にスマホの画面を暗くした。
見られてはないけれど、やはりドキドキする。
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