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二人で席に戻ると、大きな瞳を揺らしながら「大丈夫ですか?」とマイカちゃんがわたしに声を掛ける。
それに、「ごめんね。ちょっと飲み過ぎたみたい」と返事をして、敦士に視線を移した。
「悪いけど、先に帰るね」
「ああ、またな」
「うん」
短い言葉を交わしてバッグを手に取った。
次に敦士の顔を見るのは、斉藤君の結婚式になるだろう。
その時までは、もう少し冷静でいられるようになっていたい。
そして
田所さんと敦士が、親しげにやり取りをしているのをぼんやりと眺めながら。
敦士と二人で飲むことは、もう無いんだろうなと思った。
この想いは、いつか消えて無くなる。
その日が来たら、笑い話として敦士に話してみよう。
わたしの気持ちを知ったときの敦士の表情を想像しながら、わたしは席を立った。
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