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      「あの、田所さん」 「ん?」とビアグラスを持ったままで、田所さんがわたしの方に顔を傾ける。 でも、わたしの言いたいことって? 「…………」 「で、さっきは何を怒ってたの?」 「だから、怒ってません」 「俺には、怒っているように見えたけど?」 怒っているというより、田所さんの真意が見えなくてイラついているだけ。 中途半端に気持ちを揺さぶられれば、誰だっていい気はしない。 からかっているのなら、止めて欲しい。 意を決して、田所さんに向き直る。 「だいたい、田所さんはどういうつもりで……」 それなのに 田所さんの熱っぽい瞳に見詰められると、それ以上言葉に出来なくなる。 「知りたいなら、俺の部屋においでよ」
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