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      それは、反則だ。 だって、そうでしょう? そんな顔をされれば、わたしが何も言えなくなると、田所さんはわかっているはずだ。 「どうする?」 そう言って、ビアグラスを空にする。 「…………」 田所さんは、もうわたしを視界に映してはいないのに。 わたしは、言葉を失くして、田所さんの横顔を見ていた。 初めて食事をした時とは、随分と印象が違う、端正な顔立ち。 どうして、そう感じるのだろう。 ……知りたい。 大人になると、何をするにも理由が必要になる。 自分に言い訳をするように、繰り返す。 ただ、田所さんを知りたいだけ、だと。
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