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「ムキになって言い返すかと思えば、予想に反して黙り込むし、大胆に誘うかと思えば、涙を見せたりする。まったく、吉川さんは困った女だよ」
ビールをゴクリと飲むと、口元だけで笑って、わたしを軽く睨む。
「き、急に何を言うんですか」
「俺が思っていることだよ」
「…………」
言葉に困って、ビールを口に運ぶ。
今日はもう、これ以上飲めそうにない。
ここに来た目的も忘れてしまうほど、わたしは動揺していた。
……聞いてはダメだ。
引き返せなくなってしまう。
でも、敦士を忘れたい。田所さんは、それを承知している。
だったら、何か問題でもある?
「俺は、吉川さんが気になってる。いや、付き合いたいと思っている」
「……田所さん」
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