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迷惑を掛けているって、わかってる。
本当は、わたしだって一人になりたいのに。
田所さんの腕を解いて、エレベーターの壁に凭れかかった。
「もう大丈夫ですから」
「お茶ぐらい飲ませてよ」
「また今度にしてください」
「お礼は、なし?」
その言葉にムッとして顔を上げると、田所さんは、わたしを見詰めて声を出して笑った。
「部屋の前まで送るよ」
「…………」
きっと何を言ったって、部屋の前まで着いてくるだろうし、何より言い返すのが面倒だった。
部屋の前に辿り着いて、バッグから部屋の鍵を取り出すと、それを田所さんに取り上げられてしまった。
「ちょっと、」
「静かに」
そう言うと、田所さんは勝手に鍵を開けて部屋の中に入っていく。
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