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7.
大きな紙袋を抱えて事務所を出る。
紙袋の中身は二十日締めの請求書。今月は連休を挟むため、直接郵便局に持ち込んでいるのだ。
他の部署の分も合わせると、紙袋一杯分になったそれを持ってエレベーターに乗り込んだ。
「ちょっと、待った」
扉が閉まる寸前、その声を聞いて、慌てて開くのボタンを押す。
「あ、田所さん」
驚いたことに、乗り込んできたのは、田所さんだった。
「お疲れ」
「お疲れ様です」
仕事モードの田所さんは、何か考え事をしているのか、1Fのボタンを押すと、ニコリともせずに黙り込んでしまった。
あれから、特に会話をする機会も無くて、明日には週末を迎えるけれど。
この雰囲気じゃ、週末の約束を覚えていますか?なんて、聞くことも出来ない。
チン
甲高い金属音がして、扉が開く。
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