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「あの」
戸惑うわたしに田所さんは、当然と言うように言葉を続ける。
「多分、俺より吉川さんの方が早いと思うから、家で待ってて。部屋はわかるよね?」
「わかりますけど」
「食事はそのときに考えよう。食べに出てもいいし、俺が適当に買って帰ってもいいし」
「はい」
「それから」と田所さんは、言葉を区切る。
「帰すつもりは無いから、泊まる用意をしてきて。いい?」
声は優しくても、有無を言わせない言い方に苦笑して頷くと、田所さんは小さく息を吐いた。
「無理強いするつもりは」
そんな田所さんの言葉に「いいえ」と首を横に振る。
「わたしも、泊まりたいから」
合鍵を渡してくれた田所さんの気持ちに応えたい。
そして、もっと。彼を好きになりたい。
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