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「その人、新人イビリが趣味なの。気にしないでいいよ。次何かあったら、向こうが話している途中でもいいから、わたしに電話を回して。いい?」
川原さんは、「はい」と返事をしたものの、浮かない顔のままだ。
そうだよね。朝から嫌味を言われたら、テンションが下がっても仕方が無い。
「大丈夫です。気にしません」
そう言って、溜め息を漏らす。
木村さんに何を言われたのかは、大体想像がついた。
わたしも新人の頃は、何度と無く嫌味を言われてきたから。
あの人の嫌味は免疫がないと結構シンドイかもしれない。
「あのね、今日もし用事が無かったら、どっか飲みにでもいかない?」
「……ありがとうございます。でも、気を遣わないでください」
「ううん。わたしが話したいことがあるの」
わたしがそう言うと、川原さんは渋々「わかりました」と頷いた。
出来るだけ早めに仕事を終わらせるように、川原さんと業務を分担して。
彼女が行きたいと言った焼き鳥屋に予約の電話を入れると、ようやく彼女の表情は柔らかくなった。
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