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そう。ユウは思ったより器用だった。
何もかも。
わたしはユウと過ごす時間が楽しくて。
現実逃避願望も相まって、あっという間にユウに溺れていった。
休日は、日曜日の夜まで、ユウと一緒に過ごした。
六時を過ぎた頃から段々と憂鬱になっていったのは、ユウとの休日がもう少しで終わってしまうことと、自分の部屋に戻るのがイヤだったからだ。
「どうした?」
浮かない表情をしていたのか、ユウが心配そうにわたしの顔を覗き込む。
一瞬、話してしまおうと口を開きかけて、やっぱり言葉を飲み込んだ。
ユウに心配をかけたくない。
そして、自分がストーカー被害に遭っていると、認めたくなかったのかもしれない。
無かったことに出来るなら。
そんな、淡い期待もあった。
「明日から、また仕事だと思って」
そう言って誤魔化すと、ユウは「そうだな」と短く答えて苦笑いを浮かべた。
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