8

29/31
前へ
/31ページ
次へ
   夕食の片付けの後、コーヒーを飲んで寛いでいると、いつの間にか九時を過ぎてしまった。 そろそろ帰らないと……。 おそろいのマグカップをテーブルに戻して、ユウを見る。 「これ飲んだら、帰るね」 「ああ、もうそんな時間か」 ユウはテレビを見たままで、ボソリとつぶやいた。 なんだか冷たい。そう感じて、ユウの掌を軽く抓る。 「痛っ、なに?」 不機嫌そうにわたしを睨むユウに、唇を尖らして抗議する。 「もうすぐ帰るのに、ユウはテレビばっかり視てる」 そう言うと ユウは「なんだよ」と言いたげに笑って、子供にするようにわたしの頭を撫でた。 「来週、また泊まりにおいで」 「……来週は、多分無理なの」 あと数日で、月に一度のアレになってしまう。 そんな時に、男性の一人暮らしの部屋には泊まれない。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!

420人が本棚に入れています
本棚に追加