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「お前、付き合ってるときも俺に全然甘えなかっただろ。
だから……。
って、俺は何を言ってるんだろうな」
「…………」
何も言えなかった。
敦士と恋人だったころのわたしは、強がってばかりいた。
でもそれは、女の自分を見せて、敦士にがっかりされるのが怖かったからだ。
男とか女とか親友でいるときは関係なくても。
恋人となれば、まるで違う。
わたしは、いつまでも敦士の特別でいたかったのだ。
「行くか」
「……うん」
車は敦士のマンションに向かって走り出す。
着くまでわたし達は無言だった。
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