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それは、中肉中背のどこにでもいるような普通の男だった。
鍵を持っていないところを見ると、やはり住人じゃない。
その男はしばらくエントランスをウロウロと歩き回ったかと思うと、ロックを解除するために部屋番号を押し始めた。
押しているのは、わたしの部屋なんだ。
そう思うと、録画映像なのに、今この瞬間にインターホンを鳴らされているような錯覚に襲われて、背筋がゾクリと寒くなった。
「……敦士」
「コイツで間違いないな」
敦士の言葉に頷いて、画面を再び凝視する。
だけど、フードを被っている所為で肝心の顔がはっきりと見えず、誰だか特定することが出来ない。
「これだけじゃ」
「そうだな、顔が見えないと」
解決の糸口が見つかると期待していただけに、ひどく落胆してしまう。
敦士の声にも張りが無くなってしまった。
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